2026年9月30日、千葉県匝瑳市の海岸で、1頭のクジラが浅瀬にいるのが見つかりました。
この海岸では、その約10日前にも体長約17mのナガスクジラが打ち上がっており、短期間に2頭のクジラが確認されたことになります。
なぜクジラは海岸に打ち上がるのでしょうか?
実は、クジラが海岸にたどり着いてしまう「ストランディング」には、原因が一つに決まっているわけではありません。
病気や衰弱、海流、地形、天候、人間活動など、さまざまな要因が関係する可能性があります。
この記事では、今回の千葉県匝瑳市での事例を紹介しながら、クジラが海岸に打ち上がる理由や、浅瀬から戻れなくなる仕組みについて解説します。
千葉県匝瑳市でクジラが相次いで確認された
9月30日に海岸の浅瀬でクジラを確認
2026年9月30日午後3時ごろ、千葉県匝瑳市の海岸にクジラがいると市民から通報がありました。
千葉県によると、県土木事務所の職員が現場を確認したところ、海岸近くの浅瀬にクジラがいるのが見つかりました。
発見当初は生きており、潮を吹いたり、ひれを動かしたりする様子が確認されています。
その後、クジラは衰弱が進み、10月2日の報道では、さらに陸側へ移動していることが伝えられました。県は、近づかないよう注意を呼びかけています。
9月19日にも約17mのナガスクジラが漂着
今回のクジラが確認される少し前、9月19日にも同じ匝瑳市の海岸でクジラが見つかっていました。
この個体は体長約17mのナガスクジラで、発見された時点ですでに死亡していました。
9月30日には国立科学博物館の研究者による学術調査が行われ、その後、解体・埋設されています。
同じ地域で短期間に2頭のクジラが確認されたことから、なぜこの場所で相次いで漂着したのかにも注目が集まりました。
台風による海流の変化が関係した可能性も
国立科学博物館の田島木綿子研究主幹は、今回のように短期間で同じ場所に大きなクジラが相次いで打ち上がることについて、台風によって海流が変化した可能性を指摘しています。
2026年9月には千葉県付近に台風25号、26号が接近しており、こうした影響で海流が変化した可能性があると説明されています。
ただし、これは今回のクジラの座礁原因が「台風だった」と確定したという意味ではありません。
クジラのストランディングには複数の要因が考えられ、個体によって原因が異なる可能性があります。
そのため、今回の匝瑳市のクジラについても、現時点では原因を断定せず、「台風による海流の変化が一つの可能性として指摘されている」と捉える必要があります。
クジラの「ストランディング」とは?

海岸に打ち上げられる現象
クジラやイルカなど、本来は海で暮らしている動物が海岸に打ち上げられたり、湾や河口などに入り込んだりする現象を「ストランディング」と呼びます。
国立科学博物館では、クジラやイルカのストランディング個体を調査し、病気や死因、食性、繁殖、環境汚染物質などについて研究しています。
ストランディングは、必ずしも「生きたクジラが砂浜に乗り上げること」だけを指すわけではありません。
生きた個体だけでなく、死亡した個体が海岸へ流れ着くケースも含まれます。
「座礁」「漂着」「ストランディング」の違い
ニュースでは「座礁」「漂着」「打ち上げ」など、さまざまな表現が使われます。
一般的には、
- 座礁:浅瀬などに乗り上げ、自力で戻れなくなること
- 漂着:海流や波などによって海岸へ流れ着くこと
- ストランディング:クジラやイルカなどが海岸に打ち上げられたり、湾などに入り込んだりする現象を指す広い言葉
と考えると分かりやすいでしょう。
今回の匝瑳市のようなケースでも、報道では「漂着」「打ち上げ」などの表現が使われています。
クジラが海岸に打ち上がるのはなぜ?

クジラが海岸に打ち上がる理由は、一つではありません。
国立科学博物館も、ストランディングの原因についてはまだ分かっていない部分が多く、すべてのケースに共通する原因があるわけではないと説明しています。
では、どのような要因が考えられるのでしょうか。
病気やケガで弱っている
クジラが病気やケガなどによって体力を失うと、普段のように泳ぐことが難しくなる可能性があります。
ストランディングした個体を解剖すると、病気や死因、寄生虫、栄養状態などを調べられることがあります。
そのため、海岸に打ち上がったクジラは、単に「迷子になった」のではなく、すでに体調を崩していた可能性も考えられます。
ただし、個体を詳しく調査する前に「病気が原因だった」と判断することはできません。
海流や波の影響を受ける
クジラは海の中を泳いで移動しています。
そのため、海流や波の変化によって、普段とは異なる方向へ運ばれることがあります。
特に体力が落ちている個体では、強い海流に逆らって泳ぐことが難しくなり、結果として海岸へ近づいてしまう可能性があります。
今回の匝瑳市のケースでも、専門家から台風による海流の変化が関係した可能性が指摘されています。
海岸の地形が関係することも
海岸の地形も、ストランディングを考えるうえで重要な要素です。
国立科学博物館によると、遠浅の砂地では、クジラやイルカが周囲の地形を把握しにくくなる可能性があります。
さらに、一度浅瀬に入り込むと、尾びれが海底に当たって泳ぎにくくなることもあります。
海の中では自由に動けるクジラでも、浅瀬では十分な推進力を得られなくなり、沖へ戻ることが難しくなる場合があるのです。
天候や海の状態が影響する場合も
台風や強い風などによって海の状態が大きく変化すれば、クジラの移動にも影響する可能性があります。
ただし、「台風が来たからクジラが座礁する」という単純な関係ではありません。
今回の匝瑳市のケースについても、台風による海流の変化はあくまで専門家が示した可能性の一つです。
個体の健康状態や海岸の地形など、ほかの要因も含めて考える必要があります。
人間の活動が関係する場合もある
クジラのストランディングには、人間の活動が関係するケースもあります。
例えば、
- 船舶との衝突
- 漁具への絡まり
- 海洋ごみ
- 人間活動による負傷
などです。
ただし、これらがすべてのストランディングに当てはまるわけではありません。
その個体に実際に何が起きていたのかを知るには、外傷や体内の状態などを詳しく調べる必要があります。
複数の原因が重なっている可能性も
クジラのストランディングは、一つの原因だけで説明できない場合もあります。
例えば、
病気やケガで体力が低下する
↓
海流に逆らって泳ぐことが難しくなる
↓
海岸付近へ流される
↓
浅瀬に入り込み、沖へ戻れなくなる
というように、複数の要因が重なることも考えられます。
国立科学博物館も、ストランディングの原因には諸説があり、すべてのケースに共通した原因があるわけではないとしています。
クジラはなぜ浅瀬から海へ戻れなくなるの?

水中では浮力に支えられている
クジラの体は非常に大きく、巨大な種類では体長が十数mに達します。
それでも海の中で自由に泳げるのは、水の浮力によって体が支えられているからです。
ところが浅瀬や陸上では、その環境が大きく変わります。
特に大型のクジラが陸上に乗り上げると、自分自身の体重による負担が大きくなります。
そのため、座礁したクジラを単純に「海へ押し戻せばいい」と考えることはできません。
尾びれを十分に動かせなくなる
クジラは尾びれを上下に動かして推進力を生み出します。
しかし浅瀬では、尾びれが海底に当たるなどして、十分に動かせなくなることがあります。
国立科学博物館も、浅瀬に入り込んだクジラやイルカは尾が底に当たって泳ぎにくくなる可能性を説明しています。
一度浅瀬に入り込むと、そこから自力で沖へ戻ることが難しくなる場合があるのです。
海岸でクジラを見つけたらどうする?
近づいたり触ったりしない
海岸に大きなクジラがいれば、珍しい光景だけに近くで見たくなるかもしれません。
しかし、弱っているクジラでも突然動くことがあります。
また、クジラの健康状態が分からない以上、むやみに触ることも避けるべきです。
今回の匝瑳市のケースでも、衰弱したクジラに近づかないよう注意が呼びかけられています。
また、亡くなってして時間が経っている場合は、爆発に巻き込まれる可能性があります。
自分で海へ戻そうとしない
「助けてあげたい」と思っても、大型のクジラを人の力で海へ戻すのは簡単ではありません。
クジラにも人にも危険が及ぶ可能性があります。
水産庁も、座礁・混獲した鯨類を発見した場合は、まず都道府県や市町村などの関係者へ連絡し、自治体を中心に対応するよう案内しています。
そのため、発見した場合は無理に近づいたり動かしたりせず、自治体などの関係機関へ連絡することが大切です。
座礁したクジラから何が分かる?
海岸に打ち上がったクジラは、研究者にとって貴重な調査対象になることがあります。
病気や死因を調べられる
ストランディングした個体を調べることで、どのような病気にかかっていたのか、なぜ死亡したのかなどを調べられる場合があります。
国立科学博物館では、ストランディング個体の病理学的な解剖を行い、死因などを調べています。
何を食べていたのか分かる
クジラの胃の内容物を調べることで、その個体が何を食べていたのかを知る手掛かりも得られます。
これは、クジラの食性や海の中での生態を知るために重要な情報です。
海洋環境を知る手掛かりにもなる
クジラの体内に含まれる環境汚染物質などを調べることで、人間活動が海洋生物にどのような影響を与えているのかを研究することもできます。
つまり、ストランディングは悲しい出来事である一方、そこからクジラや海洋環境について新たな情報が得られることもあるのです。
今回の匝瑳市のクジラが打ち上がった原因は?
今回の千葉県匝瑳市のクジラについて、現時点で座礁の原因が確定したわけではありません。
10月2日の報道では、国立科学博物館の田島木綿子研究主幹が、台風によって海流が変化した可能性を指摘しています。
また、クジラが弱っていると海流に逆らって泳ぐことが難しくなり、漂着につながるケースがあると説明しています。
ただし、今回の個体について、
- 台風が直接の原因だった
- 病気が原因だった
- 海洋環境に異常があった
- 何らかの人間活動が原因だった
などと断定できる情報が出ているわけではありません。
現時点では、台風による海流の変化などが可能性の一つとして考えられているものの、原因は確定していないと理解するのが適切です。
クジラのストランディングは珍しい現象なの?
クジラやイルカのストランディングは、日本でも継続的に確認されています。
10月2日の報道で田島研究主幹は、日本全体では年間約300件のストランディングが報告されていると説明しています。
そのため、「日本ではクジラが海岸に打ち上がること自体が極めて珍しい」というわけではありません。
一方で、同じ地域に短期間で大きなクジラが相次いで打ち上がることは、研究者にとっても注目されるケースです。
国立科学博物館によると、ストランディングの原因にはまだ分かっていない部分が多く、個々の事例を調べながらデータを蓄積していくことが重要とされています。
クジラの座礁は「原因を一つに決められない」ことも多い
クジラが海岸に打ち上がる理由としては、
- 病気やケガ
- 体力の低下
- 海流や波
- 海岸の地形
- 天候や海の状態
- 船舶との衝突
- 漁具への絡まり
- 海洋ごみ
- 複数の要因
など、さまざまな可能性があります。
しかし、これらがすべてのケースに当てはまるわけではありません。
国立科学博物館も、ストランディングの原因については諸説があり、すべてのストランディングに共通する原因があるわけではないと説明しています。
今回の匝瑳市のクジラについても、原因を一つに決めつけるのではなく、今後の調査や専門家による分析を踏まえて考える必要があります。
クジラ座礁と地震の因果関係はあるの?
今回のような、「座礁(ストランディング)」のニュースが流れるたびに、「大地震の前兆ではないか」と不安視する声がSNSなどで広がる光景がたびたび見られます。
実際のところ、クジラの座礁と地震の間には科学的な因果関係はあるのでしょうか。
結論から言うと、クジラの座礁と地震を結びつける明確な科学的データや証拠はないとされています。
東海大学の研究によると、クジラ類の座礁は日本国内や世界中でも一定の頻度で確認されている現象であり、その主な要因としては以下のようなものが挙げられます。
参考元:https://mainichi.jp/univ/articles/20181012/org/00m/100/016000c
- 地形や潮流の影響: 遠浅の海岸や入り組んだ地形などにより、方向感覚を失ってしまう。
- 群れのリーダーの誤認: 群れで行動する種の場合、リーダーが浅瀬に迷い込むことで他の個体も追随してしまう。
- 健康状態や疾病: 病気や寄生虫の感染によって衰弱しているケース。
- 音響の影響: 人間の活動による水中音(軍事ソナーなど)による混乱。
このように、クジラが座礁する原因は生態や海洋環境面など多岐にわたります。大きな地震の直前に座礁が起きた事例が注目を集めることもありますが、それは多くの場合「偶然の一致」や印象に残りやすい記憶(確証バイアス)によるものと考えられており、科学的に証明された事実ではありません。
珍しい自然現象やショッキングなニュースに直面したときこそ、不確かな情報に惑わされず、専門家の見解をもとに冷静に事実を見極める姿勢が大切です。
まとめ|クジラが海岸に打ち上がる理由は一つではない
クジラが海岸に打ち上げられる「ストランディング」には、さまざまな原因が考えられます。
病気やケガ、体力の低下、海流や地形、天候、人間活動などが関係する場合があり、複数の要因が重なっている可能性もあります。
2026年9月30日に千葉県匝瑳市で確認されたクジラについては、台風による海流の変化が関係した可能性が専門家から指摘されています。
ただし、現時点で今回のクジラの座礁原因が確定したわけではありません。
また、少し前に同じ地域で確認されたナガスクジラについては、国立科学博物館による学術調査も行われています。
海岸に打ち上げられたクジラは、私たちが普段見ることのできないクジラの健康状態や食性、海洋環境について知るための貴重な研究材料にもなります。
もし海岸でクジラを見つけた場合は、近づいたり触ったり、自分で海へ戻そうとしたりせず、自治体などの関係機関へ連絡しましょう。






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