PR

ホッキョククジラとは?200年以上生きる可能性がある北極の巨大なクジラを解説

ホッキョククジラ 野生動物
このサイトには広告が含まれています。

北極圏の冷たい海に暮らし、200年以上生きる可能性があるとされるクジラがいます。それがホッキョククジラです。

こちらでご紹介している、ニシオンデンザメが「世界一長寿な脊椎動物」の座に君臨するサメだとすれば、ホッキョククジラは「哺乳類の中で特に長寿」とされる存在です。

同じ地球上に、こんなにも長い時間を生きる生き物たちがいるというのは、驚きとしかいいようがありません。

どれくらい大きいのか。なぜそんなに長生きできるのか。

北極の海でどう暮らしているのか。どんなものを食べているのか。

そして、絶滅の危機にあるのか――。
この記事では、そんなホッキョククジラの謎に迫っていきます。

ホッキョククジラとは?

ホッキョククジラ

ホッキョククジラ(学名:Balaena mysticetus、英名:Bowhead whale)は、クジラ目セミクジラ科に分類されるヒゲクジラの一種です。

北極圏および亜北極圏にのみ生息する、北極海に生息する唯一の大型クジラとされています。英名の「Bowhead(弓形の頭)」は、弓のように大きく湾曲した特徴的な頭部の形に由来しています。

項目内容
分類哺乳類・クジラ目セミクジラ科
学名Balaena mysticetus
英名Bowhead whale
生息域北極圏・亜北極圏(北極海、ハドソン湾、オホーツク海など)
体長約16〜18m(最大で21m前後との記録も)
体重約60〜100t
寿命少なくとも150〜200年、最高齢の確認個体は推定211歳
食性動物プランクトン、オキアミ、小型の甲殻類など

※体長・体重・寿命などの数値には資料によって幅があり、いずれも研究段階の推定値を含みます。

ホッキョククジラの特徴

1頭のホッキョククジラ

厚い脂肪で極寒の海を生きる

ホッキョククジラ最大の特徴のひとつが、極めて厚い脂肪層です。その厚さは50cmにも達するといわれ、氷点下の北極海でも体温を維持できる、優秀な断熱材の役割を果たしています。

さらに、クジラという生き物は体が大きいほど、体積に対する表面積の割合が小さくなるため、熱を体外に逃がしにくいという性質も持っています。

体長16〜18m、体重60〜100tという巨体そのものが、寒さに耐えるための武器になっているのです。皮下脂肪と巨体という「二重の防寒対策」によって、ホッキョククジラは極寒の北極海を生活の場にできていると考えられます。

巨大な頭で海氷を割る

名前の由来にもなっている、弓なりに湾曲した巨大な頭部も、ホッキョククジラを語るうえで欠かせない特徴です。

頭部は体長の3分の1近くを占めるとされ、この頑丈な頭を使って、海面に張った氷を下から突き破って呼吸用の穴を作ることができます。

海氷の下という、他の多くの生物にとっては近寄りがたい環境を生活圏にできるのは、この頑丈な頭部のおかげだといえるでしょう。

ヒゲ板を使ってエサをこし取る

ホッキョククジラは、歯を持たない「ヒゲクジラ」の仲間です。上あごには「ヒゲ板」と呼ばれる、櫛のような構造の器官がずらりと並んでおり、海水ごと小さな獲物を吸い込んだあと、このヒゲ板で水だけをこし出し、動物プランクトンなどの餌をまとめて捕らえます。

あの巨大な体を、目に見えないほど小さな生き物たちの積み重ねで維持しているというのは、なんとも不思議な話です。

長いひげ板を持つ

ホッキョククジラのヒゲ板は、クジラの仲間の中でも特に長いことで知られています。なぜこれほど長いヒゲ板を持つのかというと、ホッキョククジラの主な採餌方法と関係があると考えられています。

海面近くだけでなく、時には水中を泳ぎながら口を開けたまま進み、大量の海水をヒゲ板でこし取り続ける「連続ろ過摂食」という方法をとることがあり、効率よく小さな獲物を集めるためには、長く発達したヒゲ板が有利に働くと考えられます。

また、独り立ちしたばかりの若いホッキョククジラは、まだヒゲ板が短く、北極圏での採餌に十分対応できないことが知られています。

これを補うため、一時的に体の成長を止め、栄養をヒゲ板の成長に優先的にまわすという、他の動物にはあまり見られない戦略をとることも報告されています。

ホッキョククジラはどこに生息している?

尾鰭で水面を叩くホッキョククジラ
Olga Shpak / Wikimedia Commons / CC BY-SA 3.0

北極圏の冷たい海に暮らす

ホッキョククジラは、その名の通り北極圏および亜北極圏の海に生息する、北極海唯一の大型クジラです。

北極海のほか、カナダのハドソン湾やフォックス湾、バフィン湾、デーヴィス海峡、そしてロシア極東のオホーツク海周辺など、北半球の高緯度海域に広く分布しています。

かつては北海道近海など、より南の海域にも生息していたとされる記録もあります。

海氷とともに移動する

ホッキョククジラの暮らしは、季節ごとの海氷の動きと密接に結びついています。

海氷が広がる時期には、氷の間を縫うように移動しながら過ごし、季節の変化にあわせて回遊を行います。

前述の通り、海氷に頭から突っ込んで呼吸用の穴を開けられるという特殊な能力を持つため、他の多くの海洋哺乳類が近寄りにくい、氷に覆われた海域でも生活することができます。

この「氷とともに生きる」というライフスタイルこそ、ホッキョククジラが北極圏に特化して進化してきた証だといえるでしょう。

ホッキョククジラは何を食べる?

指に乗るオキアミ

ホッキョククジラの主な食べ物は、動物プランクトンやオキアミ、小型の甲殻類(かいあし類など)です。

歯を持たない代わりに、ヒゲ板を使って海水ごと大量の獲物をこし取るという方法で摂食を行います。

巨大な体で小さな生き物を食べる

体重60〜100tにもなる巨体を持ちながら、口にしているのは肉眼でようやく見える程度の小さなプランクトンや甲殻類だという事実は、初めて聞くと意外に感じるかもしれません。

しかし、これはクジラの仲間、特にヒゲクジラ類に共通する特徴でもあります。

小さな獲物を大量にこし取ることで、大きな体を維持するのに十分なエネルギーを得られる、効率のよい採餌スタイルなのです。

「巨大な体で、極小の生き物を食べる」というこの対比こそ、ヒゲクジラ最大の生態的な面白さのひとつといえるでしょう。

ホッキョククジラの寿命は?200年以上生きるって本当?

リンゴルム海峡を泳ぐリンゴルム海峡を泳ぐ2匹のホッキョククジラ

200年以上生きる可能性がある

かつてホッキョククジラの寿命は、他のクジラ類と同程度の60〜70年ほどだと考えられていました。

しかし近年の詳細な研究によって、少なくとも数頭の個体が150〜200年程度生きているという、信頼性の高い結論(参照:日本基礎老化学会)が得られています。

また、これまでに確認されている最高齢の個体は推定211歳とされ、さらにDNA解析からは、寿命が268年にまで達する可能性も示唆されました。

どうやって年齢を調べる?

ホッキョククジラの驚くべき長寿が明らかになったきっかけは、意外にも過去の捕鯨に関わる資料でした。

1990年代、捕獲されたホッキョククジラの体内から、19世紀に使われていた古い象牙製の銛の先端が見つかったのです。

これをきっかけに、クジラの眼球の構造を詳しく調べる研究が進み、少なくとも一部の個体が150〜200歳まで生きられるという、確かな証拠が得られました。

2006年に捕獲された個体からは、1890年代に使われていた銛が発見された例も報告されています。

このほか、目の水晶体に含まれるアミノ酸の分析など、複数の科学的な手法を組み合わせることで、より精度の高い年齢推定が行われるようになってきています。

なぜ長生きできるの?

ホッキョククジラがこれほど長生きできる理由については、まだ完全には解明されていません。ただし、近年の研究からいくつかの手がかりが得られています。

体重8万kgを超えるような巨体でありながら、その驚異的な長寿からすれば、本来はDNAの変異が蓄積し、がんを発症するリスクも高くなるはずだと考えられます。

しかし実際のデータはそれを裏付けておらず、この一見矛盾した現象の仕組みが、研究者たちの関心を集めてきました。近年の研究では、低温環境で活性化する効率の高いDNA修復タンパク質を持つことが、健康な長寿を支えている可能性が指摘されています。

ただし、これらはあくまで現時点で有力視されている仮説であり、「このタンパク質があるから200年生きられる」と単純に言い切れる段階ではありません。

今後の研究によって、さらに詳しいメカニズムが明らかになっていくと考えられます。

ホッキョククジラの生態

海面から頭を出すホッキョククジラ
Bering Land Bridge National Preserve / Wikimedia Commons / CC BY-SA 2.0

群れで暮らす?

ホッキョククジラは、単独もしくは小規模な群れで行動することが多いとされています。

回遊の際には14頭以下程度の小さな群れを作り、「V」字型の隊列を組んで移動する様子も観察されています。

多くの大型ヒゲクジラと同様、常に大きな群れで固まって暮らすタイプではなく、状況に応じて集団と単独行動を使い分けていると考えられます。

繁殖と子育て

繁殖活動は、10〜15歳程度になった頃から見られるようになります。交尾は主に春の回遊期間中に行われ、妊娠期間は10〜14カ月ほど。メスは3〜4年に一度のペースで出産するとされています。

生まれたばかりの赤ちゃんは全長4.5mほど、体重は約1tにもなり、最初の1年で9m前後にまで成長します。

授乳期間はおよそ3年ほどとされ、その間、母クジラは子育てに専念します。

前述の通り、独り立ちしたばかりの若いクジラは、ヒゲ板の成長を優先するために一時的に体の成長を止めるという、独特な戦略をとることでも知られています。

また、非常に長い寿命を持つことから、メスは90歳を過ぎても生殖能力を維持している例が報告される一方、大型の個体(幼獣を除く)のそばに子どもがいない様子が観察されていることから、人間と同じように更年期にあたる時期を経験するのではないかとする仮説も立てられています。

鳴き声でコミュニケーションする

ホッキョククジラは、高度な発声能力を持つことでも知られています。移動や採餌、群れでの行動の際に、水中で音声を使ってコミュニケーションをとっているとされ、長く繰り返される複雑な音声を発することもあります。

こうした音声は求愛のための「歌」ではないかと考えられており、繁殖期には個体ごとにオリジナルの歌を作り出し、互いに披露し合っているという報告もあります。

姿の見えない広大な北極の海で、音を頼りに仲間や繁殖相手とつながっているのかもしれませんね。

ホッキョククジラは絶滅危惧種?

イギリスにある自然博物館にあるホッキョククジラの骨格標本
画像:Emőke Dénes / Wikimedia Commons / CC BY-SA 2.5

過去に捕鯨によって大きく減少した

ホッキョククジラは、16世紀ごろから続いた商業捕鯨によって、個体数を大きく減らした歴史を持ちます。カナダのベルアイル海峡やセントローレンス湾では、16〜17世紀のあいだに2万5,000〜4万頭ものホッキョククジラが捕獲されたと推測されています。

また、1800年代初頭からの大規模な捕鯨によって、世界のホッキョククジラの個体群は壊滅的な打撃を受け、1920年代までに全世界で3,000頭未満にまで激減したとする分析もあります。

その後、商業捕鯨の終了とともに一部の個体群は回復し、ハドソン湾やフォックス湾、バフィン湾、デーヴィス海峡などの個体群は増加傾向にあると考えられています。

この回復を受けて、IUCN(国際自然保護連合)は種全体としての評価を、1986年の「絶滅危惧(EN)」、1990年の「危急種(VU)」を経て、2008年には「軽度懸念(LC)」へと引き下げました

現在の脅威は?

種全体としては「軽度懸念」まで評価が改善したホッキョククジラですが、これは油断してよいという意味ではありません。

個体群(生息する地域ごとのまとまり)によって状況は大きく異なり、東グリーンランド・スバールバル諸島・バレンツ海個体群や、オホーツク海個体群(生息数は200頭程度ともいわれる)は、今なお絶滅危惧または絶滅寸前の状態にあると評価されています。

現在の主な脅威としては、次のようなものが挙げられます。

  • 気候変動・海氷の減少:北極の温暖化によって海氷が減少すると、生息環境そのものが変化し、餌となるプランクトンの分布にも影響が及ぶ可能性があります。
  • 船舶との衝突:北極海の氷が減少したことで船舶の航行が増え、衝突のリスクが高まっているとされています。
  • 騒音:船舶や資源開発などによる水中騒音が、音声でコミュニケーションをとるホッキョククジラの行動に影響を及ぼす可能性が指摘されています。
  • 海洋環境の変化:気候変動に伴う海洋環境全体の変化が、長期的には生息域や個体群の分布に影響を与える可能性があります。

これらの脅威が及ぼす影響の大きさは、生息する地域によって異なります。

特にオホーツク海個体群のように、生息数が少なく回復の見込みが厳しいとされる個体群も存在し、種全体としての評価とは別に、個体群単位でのきめ細かな保全が求められています。

ホッキョククジラを含め、絶滅の危機にある動物についてはこちらの『絶滅危惧種とは?意味や種類・原因をわかりやすく解説|私たちにできることは?』で詳しく解説しています。

ホッキョククジラと人間の関係

解体されるホッキョククジラ
画像:Alaska Jack / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0

ホッキョククジラと人間の関わりを語るうえで欠かせないのが、商業捕鯨によって個体数が激減した歴史です。

16世紀以降、脂肪から採れる鯨油や、コルセットの芯などに使われたヒゲ板を目的に、ホッキョククジラは大規模に捕獲され続けてきました。

その結果、一部の海域では個体数が壊滅的な水準にまで落ち込んだことは、前述の通りです。

一方で現在、アメリカ・アラスカやカナダの一部地域では、先住民による「生存捕鯨」が限定的に認められています。

これは商業目的ではなく、伝統的な生活や文化を維持するための捕鯨として、それぞれの国の政府が個体群の状況を踏まえたうえで、捕獲頭数の上限を設けて管理しているものです。

例えばカナダでは、東部極北地域の個体群が一定数存在することを踏まえ、イヌイットによる年間数頭程度の捕獲であれば、個体数の維持に問題はないという判断がなされています。

こうした先住民による捕鯨は、彼らにとって伝統的な狩猟・漁労文化のひとつであり、権利として位置づけられている一方、絶滅危惧の観点からその是非を単純に語ることは難しく、生態学的な管理と文化的な権利のバランスをどう取るかという、複雑な課題を含んでいます。

ホッキョククジラに関するよくある質問

女性が疑問を考えている

ホッキョククジラは何年生きる?

少なくとも150〜200年、確認されている最高齢の個体では推定211歳とされています。

DNA解析からは、268年に達する可能性も示唆されていますが、これはあくまで研究段階の推定であり、今後さらに詳しい年齢推定が進んでいく可能性があります。

ホッキョククジラはどれくらい大きい?

体長はおよそ16〜18m、資料によっては最大21m前後に達するとされます。体重は60〜100t程度で、地球上に生きる動物の中でも屈指の巨体を持つ種のひとつです。

ホッキョククジラは何を食べる?

動物プランクトンやオキアミ、小型の甲殻類などを主な食べ物としています。歯を持たず、上あごに並んだヒゲ板で海水ごと獲物をこし取って食べる、ヒゲクジラならではの採餌スタイルをとっています。

ホッキョククジラはどこにいる?

北極圏および亜北極圏の海に生息しており、北極海のほか、カナダのハドソン湾やバフィン湾、ロシア極東のオホーツク海周辺などで見られます。北極海に生息する唯一の大型クジラとされています。

ホッキョククジラは絶滅危惧種?

種全体としては、IUCNのレッドリストで「軽度懸念(LC)」に分類されており、商業捕鯨の終了以降、多くの個体群で回復傾向が見られています。ただし、東グリーンランド・スバールバル・バレンツ海個体群やオホーツク海個体群など、一部の地域個体群は今も絶滅危惧の状態にあるとされ、地域によって状況が大きく異なる点に注意が必要です。

まとめ

ホッキョククジラは、「北極圏」に生息する唯一の大型クジラであり、「巨大な体」と厚い脂肪で極寒の海に適応した哺乳類です。

少なくとも150〜200年、確認されている最高齢では211歳と推定される「長寿」ぶりは、既知の哺乳類の中でも群を抜いており、その秘密の解明は、今後の生命科学にも大きなヒントを与える可能性があります。

あごに並ぶ長い「クジラヒゲ」を使い、極小のプランクトンを大量にこし取って生きるという生態も、この種ならではの魅力です。

一方で、過去の商業捕鯨によって個体数を大きく減らした歴史を持ち、種全体としての評価は改善したものの、一部の地域個体群は今も「絶滅の危機」から抜け出せていません。

気候変動や船舶との衝突など、新たな脅威にもさらされ続けています。

ホッキョククジラのように、長い年月を生きる動物についてもっと知りたい方は
[長生きする動物10選!世界一長寿の動物は?驚きの寿命や長生きの理由を紹介]
をご覧ください。

また、世界にはさまざまな絶滅危惧種が存在します。 絶滅危惧種について知りたい方は
[絶滅危惧種とは?意味や種類・原因をわかりやすく解説|私たちにできることは?]
をご覧ください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました