環境省は2026年9月11日、「我が国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種リスト(第2版)」を公表しました。
今回の改訂では、これまで「ノネコ」「ノイヌ」とされていた表記について、改訂案で検討されていた「イエネコ」「イヌ」への変更が行われず、従来の表記が維持されました。
この問題をめぐっては、公益財団法人どうぶつ基金が表記変更に反対する署名活動を行い、7万筆を超える署名が集まっていました。
では、なぜ「ノネコ」から「イエネコ」への変更が問題になったのでしょうか。今回の決定で何が変わり、今後どのような課題が残されているのでしょうか。
環境省が「生態系被害防止外来種リスト」を改訂

「生態系被害防止外来種リスト」は、生態系などに被害を及ぼす、または被害を及ぼすおそれがある外来種を整理したものです。
環境省と農林水産省は、2015年に公表した第1版について、外来種の侵入状況や生態系への被害状況などを踏まえて見直しを進めてきました。
そして2026年9月11日、約10年ぶりとなる第2版が公表されました。
環境省によると、このリストは国や自治体、事業者、研究者、国民などが外来種対策を進める際の基礎資料として活用することを目的としています。
今回の改訂では、外来種の最新の侵入状況や生態系への被害状況などを踏まえて、掲載種や対策の方向性などが見直されています。
「ノネコ」「ノイヌ」を「イエネコ」「イヌ」に変更する案が検討されていた
今回、大きな注目を集めたのが猫と犬の表記です。
従来のリストでは、
- ノネコ
- ノイヌ
という名称が使われていました。
ところが今回の改訂過程では、「ノネコ」を「イエネコ」に、「ノイヌ」を「イヌ」に変更する案が検討されていました。
どうぶつ基金は、この変更について、飼い猫や野良猫、地域猫などまで「防除」の対象になると受け取られる可能性があるとして反対を表明。
2026年7月には環境大臣への要望書提出とオンライン署名活動を行いました。
その後、7万筆を超える署名が集まったと、どうぶつ基金が発表しています。
「イエネコ」「イヌ」への変更は見送られる
その後、環境省側では「ノネコ」から「イエネコ」、「ノイヌ」から「イヌ」への変更を見送る方向となりました。
そして2026年9月11日に正式公表された第2版でも、従来どおり「ノネコ」「ノイヌ」の表記が維持されています。
今回の決定を受け、どうぶつ基金は、署名活動や多方面からの働きかけが今回の見直しにつながったとしています。
一方で、どうぶつ基金は「ノネコ」「ノイヌ」という名称自体についても課題が残っているとしており、今後も削除を求める活動を続ける方針を示しています。
なぜ「ノネコ」と「飼い猫」の区別が問題になるのか

今回の問題を理解するうえで重要なのが、「ノネコ」という言葉の意味です。
一般的には「野生化した猫」というイメージがありますが、実際の現場では、山や離島などで見つかった猫について、
- 飼い猫なのか
- 捨てられた猫なのか
- 野良猫なのか
- 野生化した猫なのか
を外見だけで判断することが難しいケースがあります。
どうぶつ基金は、この点を今回の表記変更に反対する理由の一つとして挙げています。
一方、環境省が今回改訂したリストは、外来種による生態系への被害や、その可能性を踏まえて対策を進めるための基礎資料です。
そのため、今回の問題は単純に「猫を守るか、生態系を守るか」という二者択一ではなく、外来種による生態系への影響と、飼育・遺棄・野生化した猫への対応をどのように区別して考えるかという点も重要になります。
どうぶつ基金は「駆除」ではなくTNRによる「増やさない」対策を主張
どうぶつ基金は、1988年の設立以来、猫の不妊手術や譲渡などに取り組んできました。
同基金の公式サイトによると、2026年9月時点で「さくらねこTNR」の累計手術数は459,065頭とされています。
TNRとは、野良猫などを捕獲して不妊・去勢手術を行い、元の場所に戻して地域で見守る取り組みです。
どうぶつ基金は、こうした活動によって猫が増えることを抑え、人と猫が共生できる環境をつくることを目指しています。
今回の声明でも、希少種の保全は重要な課題としたうえで、猫を捕獲・駆除するのではなく、不妊手術によって「増やさない」ことを重視する考えを示しています。
今回の決定で「ノネコ」「ノイヌ」がリストから消えたわけではない
ここは今回のニュースを理解するうえで注意したいポイントです。
今回見送られたのは、
「ノネコ」→「イエネコ」
「ノイヌ」→「イヌ」
という表記変更です。
「ノネコ」「ノイヌ」という名称そのものが、今回の改訂によってリストから削除されたわけではありません。
環境省は9月11日に第2版を正式公表しており、今後も「ノネコ」「ノイヌ」の扱いについて議論が続く可能性があります。
今後の焦点は「ノネコ」「ノイヌ」の扱い
今回の改訂によって、少なくとも「イエネコ」「イヌ」という種全体を示す名称への変更は行われませんでした。
一方、どうぶつ基金は今回の結果をゴールとはしておらず、「ノネコ」「ノイヌ」のリストからの完全削除を目指して活動を継続するとしています。
また、同基金は以前から、鳥獣保護管理法上の狩猟鳥獣から「ノネコ」「ノイヌ」を削除することも求めています。2026年7月には追加署名36,838筆を環境省へ提出したと発表しており、これまでの提出分を合わせて84,093筆になったとしています。
そのため今後は、外来種対策としての「ノネコ」「ノイヌ」の扱いだけでなく、狩猟制度における位置づけについても議論が続くと考えられます。
今回のニュースをどう考えればいい?
今回の一連の動きでは、猫の保護と生態系保全という2つの課題が注目されました。
外来種による生態系への影響を防ぐことは重要ですが、一方で、飼育放棄や繁殖によって増えた猫への対策についても考える必要があります。
環境省は今回のリストについて、外来種対策を進めるための基礎資料として位置づけています。石原環境大臣も9月11日の会見で、外来種対策を進めて貴重な生態系を守ることの重要性を説明しています。
今後は、
- 生態系への影響をどのように評価するのか
- 野生化した猫と飼育・遺棄された猫をどう区別するのか
- 猫が野生化する原因をどう減らすのか
- 不妊・去勢手術などの繁殖抑制をどう活用するのか
- 希少種の保全と動物福祉をどのように両立するのか
といった点が重要な論点になりそうです。
まとめ
2026年9月11日に環境省が公表した「生態系被害防止外来種リスト(第2版)」では、改訂案で検討されていた「ノネコ」から「イエネコ」、「ノイヌ」から「イヌ」への表記変更は行われませんでした。
今回の表記変更をめぐっては、どうぶつ基金などが反対の声を上げ、7万筆を超える署名が集まったとされています。
ただし、「ノネコ」「ノイヌ」という表記自体がリストから削除されたわけではありません。
今後は、外来種による生態系への影響を抑えながら、猫や犬の適正飼育、遺棄防止、繁殖抑制などをどのように組み合わせていくのかが重要になりそうです。
動物を守ることと生態系を守ることを対立させるのではなく、双方の課題をどのように解決していくのか。今後の環境省や自治体の対応にも注目が集まりそうです。
■ 引き続き署名活動を行っています!
どうぶつ基金では、Change.orgでオンライン署名を引き続き行っています。集まった声は、環境省への働きかけに活用させていただきます。皆様のご協力をお願いいたします。
▶ 署名ページ:イエネコを「防除推進外来種」にしないよう、環境大臣に求めます




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