2026年9月1日、環境省による「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律施行令」の改正が施行されました。
今回の改正では、これまで特定外来生物に指定されていなかった生物のうち、
- ブルーギル以外のブルーギル属に属する種
- マーレーコッド
- ゴールデンパーチ
- オヤニラミ以外のオヤニラミ属に属する種
- ブルーギル属の種同士の交雑によって生じた生物
が新たに「特定外来生物」に指定されています。
魚好きの人やアクアリウムを楽しんでいる人にとっても、決して無関係な話ではありません。
では、なぜこれらの生物が規制されることになったのでしょうか。
この記事では、環境省の発表をもとに、今回の改正内容と「特定外来生物」とは何なのかを分かりやすく紹介します。
そもそも「特定外来生物」とは?
「特定外来生物」とは、海外から日本に持ち込まれた外来生物のうち、生態系や人の生命・身体、農林水産業に被害を与える、または被害を与えるおそれがあるものとして指定された生物です。
日本には、もともとその地域に生息していなかった生物が、人間の活動などによって持ち込まれた例が数多くあります。
こうした外来生物のすべてが問題になるわけではありません。
しかし、在来の生物を捕食したり、生息場所や餌を奪ったり、繁殖することで地域の生態系に大きな影響を与える可能性があります。
そのため、特に被害を及ぼすおそれがある生物については、法律によって取り扱いが規制されています。
今回の改正前には、特定外来生物として合計162種類が指定されていました。
今回、新たに指定された5種類とは?
今回の改正で対象となったのは、次の5つです。
1.ブルーギル以外のブルーギル属

ブルーギル属(Lepomis属)には、ブルーギル以外にも複数の種が存在します。
今回の改正では、すでに特定外来生物となっているブルーギルを除き、ブルーギル属に属する種が新たに規制対象となりました。
さらに、ブルーギル属の異なる種同士を交雑させて生じた生物についても、新たに規制対象となっています。
2.マーレーコッド

マーレーコッドは、オーストラリアに生息する大型の淡水魚です。
学名は「Maccullochella peelii」。
大型になる魚として知られ、観賞魚や外来生物の問題を考えるうえでも注目される魚です。
今回、このマーレーコッドも特定外来生物に指定されました。
3.ゴールデンパーチ

ゴールデンパーチは、オーストラリアなどに分布する淡水魚で、学名は「Macquaria ambigua」です。
今回の改正により、新たに特定外来生物として指定されました。
4.オヤニラミ以外のオヤニラミ属

日本にも生息する「オヤニラミ」。
今回の規制では、オヤニラミ属(Coreoperca属)のうち、オヤニラミ(Coreoperca kawamebari)以外の種が対象となりました。
ここは少し注意したいポイントです。
「オヤニラミそのものが今回、特定外来生物になった」という意味ではありません。
今回指定されたのは、オヤニラミ以外のオヤニラミ属の種です。
5.ブルーギル属の交雑個体

今回の改正では、ブルーギル属に属する種同士の交雑によって生じた生物も規制対象となりました。
さらに、その生物の子孫も対象に含まれます。
これは、単純に「特定の1種類の魚」だけを規制するものではなく、交雑によって生じた個体についても対象を広げることで、外来生物による生態系への影響を防ぐことを目的としたものです。
9月1日から何が変わった?
今回の指定で特に重要なのが、これらの生物を取り扱う際の規制です。
環境省によると、特定外来生物に指定された生物については、原則として、
- 飼養
- 保管
- 運搬
- 輸入
- 譲渡し
- 放出
などが禁止されます。
つまり、「魚だから自宅の水槽で飼っても大丈夫」とは限りません。
特定外来生物に指定された生物は、一般的なペットや観賞魚とは異なり、法律によって厳しく取り扱いが定められています。
すでに飼っている場合はどうなる?
今回の指定より前から対象となる生物を飼育していた人については、すぐに手放さなければならないという単純な話ではありません。
環境省によると、施行日前から飼養していて、今後も継続して飼養を希望する場合には、外来生物法に基づく飼養等許可の申請手続きなどが必要になります。
ただし、最も重要なのは、飼っている生物を野外に放さないことです。
環境省も「野外などに放すことは絶対にやめてください」と呼びかけています。
なぜ「放してはいけない」の?
「飼えなくなったから自然に返してあげよう」
一見すると、生き物にとって優しい行動のように思えるかもしれません。
しかし、外来生物の場合、それが日本の生態系にとって大きな問題になる可能性があります。
日本の自然環境は、長い時間をかけて多くの生物が関係しながら成り立っています。
そこに本来存在しなかった生物が入り込むと、
捕食する → 在来種が減る
餌を奪う → 在来種が生きにくくなる
繁殖する → 生態系のバランスが変化する
といった影響が起こる可能性があります。
だからこそ、「飼えなくなったら自然に返す」のではなく、最後まで責任を持って適切に対応することが重要なのです。
外来生物問題は「悪い生き物」の問題ではない
ここで忘れてはいけないことがあります。
外来生物そのものが「悪い生き物」なのではありません。
マーレーコッドやゴールデンパーチ、ブルーギル属の魚たちも、それぞれの生息地では自然環境の一部として生きています。
問題になるのは、本来の生息地とは異なる環境に人間の活動によって持ち込まれたとき、その地域の生態系などに被害を与える可能性があることです。
つまり、外来生物問題を考えるときには、
「この生き物は危険だから悪い」
と考えるのではなく、
「なぜこの生き物がここにいるのか」
「人間は生き物をどのように移動させてきたのか」
「日本の生態系にどのような影響があるのか」
という視点が大切です。
ペットや観賞魚を飼う人にも関係する問題
今回の改正は、専門家や行政だけの問題ではありません。
ペットや観賞魚を飼っている人にとっても、外来生物について知るきっかけになります。
特に海外から輸入された生き物を飼育する場合には、
「珍しいから飼ってみたい」
という気持ちだけで判断するのではなく、
その生物を日本で飼うことが法律上問題ないのか
将来的に最後まで飼育できるのか
を確認することが大切です。
生き物を家族として迎える以上、「飼い始めること」だけではなく、「最後まで責任を持つこと」まで考えたいですね。
今回の改正から考えたいこと
今回、環境省によって5種類の生物が新たに特定外来生物に指定されました。
特定外来生物に指定されると、飼養や保管、運搬、輸入、譲渡し、放出などに原則として規制がかかります。
外来生物問題は、ときに「人間対自然」という大きなテーマとして語られます。
しかし、その始まりは意外と身近なところにあるのかもしれません。
「この魚を飼ってみたい」
「珍しい生き物を見てみたい」
そんな私たちの興味や行動が、生態系とつながっていることがあります。
だからこそ、生き物を好きになることと同時に、
その生き物が暮らしている環境について知ること。
そして、
人間が生き物に与える影響について考えること。
それも、動物や自然を大切にするための一歩なのではないでしょうか。
ANIPEでは、これからも動物に関するニュースや、生き物と環境をめぐる問題について分かりやすく紹介していきます。
環境省「『特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律施行令の一部を改正する政令』の公布及び施行について」2026年9月1日発表。



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