素直で愛らしく、飼い主に対して深い忠誠心を見せる柴犬。
しかし、その一方で「柴犬のしつけは難しい」「初心者にはハードルが高い」と耳にすることも多いのではないでしょうか?
洋犬と同じ感覚でしつけを行おうとすると、頑固に抵抗されたり、威嚇されたりして挫折してしまう飼い主様が少なくありません。柴犬のしつけを成功させるために最も必要なのは、「柴犬特有の本能と気質を理解し、一貫性を持って行うこと」です。
今回は、柴犬の持つ警戒心や独立心と上手につきあいながら、信頼関係を築き上げるための「3大しつけステップ」を詳しくご紹介します。
なぜ「柴犬のしつけは難しい」と言われるのか?

柴犬は、古くから日本の山岳地帯で小型の野生動物を狩る「猟犬」や「番犬」として人間とともに生きてきました。そのため、他の犬種にはない独特な気質を持っています。
柴犬の気質①強い警戒心と自立心(野生味)
柴犬は自分の身やなわばりを守るための警戒心が非常に強く、見知らぬ人や環境に対して慎重です。また、人間に依存しすぎない自立心(独立心)を持っているため、「人間の指示を聞くメリット」を感じないと動いてくれません。
柴犬の気質②賢さと頑固さの両立
柴犬は非常に賢い犬種です。しかし、その賢さゆえに「一度嫌だと思ったことは絶対に曲げない」「人間の隙を見て自分の思い通りに動かそうとする」という頑固な面も持ち合わせています。
柴犬の気質③「おやつ」や「甘やかし」だけでは動かない
トイプードルやチワワのように、甘やかすことやおやつを与えることだけでは、柴犬との信頼関係は築けません。
柴犬にとって必要なのは、「ブレない一貫性を持った、頼れるリーダーシップ」です。飼い主が安心でき、信頼できる存在であると理解したとき、柴犬は最高のパートナーとなります。
ステップ1:噛み癖・警戒吠えを防ぐ「超・社会化トレーニング」

柴犬のしつけにおいて、最も重要であり、将来の人間関係(犬関係)を左右するのが「社会化」です。
社会化不足のまま成長した柴犬は、恐怖心や警戒心から「インターホンへの激しい無駄吠え」「通行人や他の犬への攻撃(噛みつき)」といった深刻なトラブルを引き起こしやすくなります。
生後2〜4ヶ月の「黄金期(社会化期)」をフル活用する
子犬の生後2〜4ヶ月頃は、恐怖心よりも好奇心が上回るこの時期は「社会化」にとって大切な時期です。この時期にどれだけ多くの刺激(人間・音・環境)に良い印象で触れ合えたかが、一生の性格のベースとなります。
しかし、ワクチン未接種の期間は外出には注意が必要です。
具体的な社会化ステップとテクニック
① 様々な「人」に慣れさせる
性別、年齢、格好が異なる様々な人間(男性、女性、子供、傘を差した人、帽子をかぶった人、ユニフォームを着た配達員など)に会わせます。
この時に人間だけに合わせていると、大きくなった時に同じ犬と馴染めなくなることもあるため、ドックランや愛犬家たちの集まりに参加したりすることも大切です。
もし、うまく社会化が進まない場合は、知人や通りがかった優しい人に「愛犬の大好物のおやつ」を渡してもらい、相手の手から直接あげてもらいます。
これにより「知らない人=おやつをくれる嬉しい存在」というイメージが定着します。
② 様々な「音・刺激」に慣れさせる
雷、花火、工事の音、掃除機の音、インターホンの音、トラックの走行音などに慣れさせることも大切です。
音に慣れていないと、分離不安になる可能性や大きな音でパニックを起こしてしまうこともあります。
万が一パニックになってしまって、人の手を噛んでしまったり、飛び出してして事故になってしまい、愛犬と悲しい別れになってしまう可能性があります。
トレーニングの方法として、インターホンが鳴った瞬間や、大きな音がした瞬間に「即座におやつ」を与えます。
「嫌な音が聞こえたら、むしろ良いことが起きる」というしつけを行うことで、成長しても安心できるものという認識になります。
③ 様々な「足場(環境)」を歩かせる
アスファルト、芝生、砂利道、フローリング、金属製の格子(グレーチング)、濡れた路面など、異なる感覚の床を歩かせルコも大切です。
床の質感になれていないと、怪我をしやすくなったり、歩きたくないと駄々をこねるようになることもあります。
しかし、夏場のアスファルトや冬の散歩には注意が必要です。
ステップ2:一番の難関!全身どこでも触れるようにする「ハンドリング」

柴犬には、自分の体を拘束されたり、デリケートな部位を触られたりすることを強く嫌がる「触覚過敏」の傾向があります。しかし、爪切り、ブラッシング、耳掃除、歯磨き、そして動物病院での診察など、体を触られる機会は一生続きます。
子犬のうちから「身体を触られる=気持ちいい・得をする」と学習させることが不可欠になります。
段階的ハンドリングの手順
いきなり嫌がる場所(足先や口元)を触ってはいけません。以下の順番で、焦らず徐々にステップアップしていきます。
トレーニングする時は、「1秒触る → すぐにおやつをあげる → 褒める」を1セットとし、これを毎日数分間繰り返します。慣れてきたら「3秒触る」「5秒触る」と時間を延ばしていきます。
【最重要】暴れた時の対処法:「絶対に手を離さない」
ハンドリング中に愛犬が「嫌だ!」と暴れたり、小さく唸ったりした際、慌てて手を離してしまうのは絶対にNGです。
柴犬は非常に頭が良いため、一度でも「暴れれば人間は手を離す(自分の嫌なことがやむ)」と学習してしまうと、次からはより強い力で暴れたり、最終的には「噛みつく」ことで拒否するようになってしまいます。
と言っても柴犬サイズのわんちゃんに反抗されると、恐怖を感じてしまうこともあると思います。
そんな時は、以下の手順を試してみてください。
- 暴れても力任せにねじ伏せるのではなく、優しく、しかし確実に体をホールドして手を離さない。
- 愛犬が「あ、暴れても意味がないな」と諦めて、力を抜いた一瞬(数秒間)を見逃さない。
- 静かになった瞬間にそっと手を離し、「そう!えらいね!」と大袈裟に褒めておやつを与える。
これにより、「暴れても無駄だが、おとなしくしていれば嫌なことは終わり、さらにご褒美がもらえる」という正しい学習が成立します。
ステップ3:引っ張り癖の防止方法と散歩のルール

柴犬は運動量が豊富でお散歩が大好きですが、狩猟犬のルーツを持つため、気になる匂いや獲物(小動物など)を見つけると前方にぐいぐい突進する「引っ張り癖」がつきやすい傾向にあります。
飼い主が愛犬に引きずられるようなお散歩は、首や気管への負担が大きいだけでなく、犬に「自分が進行方向を決めるリーダーだ」と誤解させ、主従関係の崩壊を招きます。
目指すべきは「リーダーウォーク」
リーダーウォークとは、犬が飼い主の横(または少し後ろ)につき、飼い主の歩調や進行方向に合わせて歩く散歩スタイルです。
リードがピンと張らず、緩やかな「Jの字」を描いている状態で愛犬が飼い主の横を歩く姿が理想的とされています。
これができると、飼い主も愛犬も安心して散歩することができます。
引っ張り癖を直す「ストップ&ターン法」
そんなリーダーウォークを目指すためには「ストップ&ターン法」と呼ばれるトレーニング方法があります。
お散歩中(またはトレーニング中)に愛犬がリードをグッと引っ張った瞬間、飼い主は以下の行動をとります。
- 無言でピタッと立ち止まる: 犬が引っ張っている間は、絶対に一歩も前に進みません。「引っ張っても前には進めない」ことを伝えます。
- 無言で反対方向にきびすを返す(ターン): 犬が前に行こうとしたら、飼い主は無言で180度くるりと向きを変え、逆方向に歩き出します。
- アイコンタクトが取れたら褒める: 急に進行方向を変えられた犬は「あれ?」と思って飼い主の顔を見ます。アイコンタクトが取れた瞬間に褒め、歩調を合わせてくれたらおやつを与えます。
これを根気よく繰り返すことで、柴犬は「飼い主の動きに注目していないと、どこに行くかわからない」「飼い主の横を歩くのが一番快適だ」と理解するようになります。
柴犬のしつけで絶対にやってはいけない5つのNG行為

柴犬のしつけにおいて、やり方を間違えると信頼関係が壊れ、問題行動が悪化する危険なNG行為が存在します。
1. 体罰や大声で怒鳴る
叩く・鼻を弾く・大声で怒鳴るなどの体罰は、柴犬にとって「恐怖と敵意の対象」でしかありません。
恐怖で押さえつけると、一時的には従うように見えても、シニア期や成犬期に「恐怖性攻撃(身を守るための本気の噛みつき)」として跳ね返ってくることもあります。
また、飼い主である主人以外の家族に対してわがままな態度や反抗的な態度をとることもあります。
2. 家族間でのルールの不一致
「お父さんはソファに上がるのを許すが、お母さんは叱る」
「同じことでも昨日は怒られたのに、今日は怒られない」
といったなにかしらの一貫性のない行動だと、柴犬をパニックにさせます。
一貫性のない指示を出すと、柴犬は序列がわからず、わがままな一面として出ることもあります。
3. イタズラをした時に追いかける
靴下やリモコンを咥えて逃げた際、大声を出して追いかけるのは逆効果です。
柴犬は「飼い主が追いかけっこで遊んでくれている!」と勘違いし、イタズラをする子に育ってしまいます。
低く静かな声で「ダメ」と伝え、おもちゃやおやつとトレード(交換)して取り返しましょう。
4. 嫌がるお手入れを強引に強行する
爪切りやシャンプーを嫌がっているのに、無理やり押さえつけて強行すると、次回から爪切りを見ただけで牙を剥くようになります。
必ず「スモールステップ+ご褒美」のセットで、少しずつ慣れさせていくようにしましょう。
5. 「ツンデレ」な気質を理解せずしつこく触る
柴犬は、自分のパーソナルスペースを大切にする犬種です。
寝ている時やくつろいでいる時にしつこく触り続けると、ストレスから攻撃性を増すことがあります。
愛犬が一人になりたがっている時は、そっとしておく優しさも必要です。
おわりに:柴犬との絆は「根気」と「深い愛情」から

柴犬のしつけは、洋犬のように「数回教えればすぐに覚えて完璧にこなす」というわけにはいかないことも多いでしょう。時には頑固さに困り果て、挫折しそうになることもあるかもしれません。
しかし、一貫性を持った正しいアプローチを根気よく続ければ、柴犬は必ずそれに応えてくれます。
一度築かれた柴犬との絆は非常に堅固で、生涯にわたりあなたを最高のパートナーとして信頼し、深い愛情を注いでくれるはずです。
焦らず、愛犬のペースに寄り添いながら、楽しくしつけに取り組んでいきましょう。



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