海の中では、まだまだ私たちが知らない「奇跡の瞬間」が存在します。
2025年夏、コスタリカのトルトゥゲロ国立公園近くで、これまで誰も見たことのない“オレンジ色のナースシャーク”が確認されました。
通常は灰褐色をしたこのサメが、まるで熱帯魚のような鮮やかな体色を持って現れたのです。
オレンジ色の正体とは?

研究者たちによると、この色合いは「キサントクロミズム」と呼ばれる珍しい色素変異によるものだと考えられています。
これは赤い色素が欠乏することで、黄色や橙色が強く出てしまう現象で、魚や鳥では報告例がありますが、サメの仲間で観察されるのは極めて珍しいことです。
さらに、この個体は目が白く濁っており、アルビニズム(先天的にメラニン色素が欠乏する状態)の特徴も併せ持っている可能性があると指摘されています。
まさに「海の中の突然変異」といえる存在です。
発見の瞬間とリリース
このナースシャークは、スポーツフィッシング中の漁師によって偶然捕獲されました。
体長は約2メートルを超えており、十分に成長していたことから、色素異常であっても自然界で生き残れることが示唆されています。
その後、このサメは再び海へと放され、現在もカリブ海のどこかを泳いでいることでしょう。
なぜこの発見が重要なのか?
今回の発見は、単なる珍しいニュースにとどまりません。
- サメ類でのキサントクロミズムは世界的に初の記録。
- 色素異常があっても長期間生存できる可能性の証拠。
- 遺伝的要因か、環境要因かを探るきっかけ。
こうした点から、海洋生物学にとっても非常に価値の高い事例といえます。今後さらなる調査が進めば、進化や多様性の研究に新しい視点をもたらすかもしれません。
ナースシャークとは?

ナースシャーク(学名 Ginglymostoma cirratum)は、主にカリブ海や西大西洋に生息する底生性のサメで、和名はコモリザメと言います。
比較的おとなしい性格で、人を襲うことはほとんどありません。
泳ぎ続けなくても「頬吸引(buccal pumping)」という方法で呼吸できるため、海底でじっとしている姿がよく見られます。
まとめ
今回のオレンジ色のナースシャークの発見は、「自然界にはまだまだ知られていない驚きが潜んでいる」ということを改めて私たちに教えてくれました。
青く広がる海の中に、突如として現れた橙色の輝き。
それは、科学に新たな謎を投げかけると同時に、自然の神秘を実感させてくれる出来事だったのです。
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